歯科医療の役割とデンタルインプラントの応用と恩恵

近年の医療の進化はめまぐるしいものがあります。歯科医療も例外ではありません。従来であれば抜歯であるような虫歯や歯周炎に侵された歯の保存技術も高まり、いつかは総入れ歯ではなく生涯自分の歯でという時代になっています。また近年良く耳にする、チタン製の人工歯根(デンタルインプラント)療法は失われた歯を自分の歯の負担をかけることなく回復することができる治療法として脚光を浴びています。ご存知の通り、チタンは今日、人工関節や整復固定用プレート等の領域へ応用され生体安定性の高い金属として知られています。
 さて、このインプラント治療は 1969年スウェーデンの医師ブローネマルクらが始めて無歯顎患者に臨床応用して以来40年、(日本で応用されて25年)患者の義歯の不自由さからの解放、予知性の高い治療法として現在では数百万人とも言われる人々に恩恵を与えてきています。近年では術式の確立やマテリアルの開発から適応症の拡大、より低侵襲な手術へと臨床応用されてきています。また、先天的、腫瘍摘出後、外傷術後の顎顔面、口腔器官実質欠損の患者へのインプラントを応用したエピテーセ、プロテーゼ治療も1980年代から行なわれるようになり、患者の社会復帰、QOLの向上に役立っています。
 私どもの施設でも1992年より、臨床応用をスタートし今までに約2000人の患者さんに4500本以上のインプラントを用いてまいりました。非常に臨床成績が良く、治療の終わった患者さんから人前で気にせず話ができる、歯の事を気にせず食べられる、家族と同じ物が一緒に食べられる。とお話しをお聞きする機会が良くあり、ただ単に咬めるようになるだけでなく、自信の回復、QOLの向上に貢献していることを感じています。近年ではインプラントは自分の歯を守る効果もあることも多々報告されてきています。このことは、まさにこれから到来するといわれている超高齢化社会には有効な治療法であると考えております。
 本日は今までに臨床応用してきた患者さんの代表的なケースを報告させていただき、この治療法のご理解、ご興味を深めて頂けましたら幸いです。