○重原 聡1,2,大場 誠悟1,田島 暢崇1,南里 篤太郎1,坂本 春生3,赤松 正4、朝比奈 泉1
1長崎大学大学院顎・口腔再生外科,2湘南デンタルケアーインプラントクリニック,3東海大学八王子病院,4東海大学形成外科
Placement of Zygoma Implants With Sinus Floor Augmentation Under Navigation System; Report of Two Cases.
○Satoshi Shigehara1,2,Seigo Ohb1,Nobutaka Tajima1,Tokutarou Tajima1,Haruo Sakamoto3,Tadashi Akamatsu4、Izumi Asahina1
1 Division of Regenerative Oral Surgery, Nagasaki University Graduated School,2 Shonan Dental Care Implant Clinic,3 Department of Oral Surgery, Tokai University School of Medicine,4 Department of Plastic Surgery, Tokai University School of Medicine
Ⅰ 目的:
近年上顎の既存骨量の少ない、あるいは顎顔面領域の腫瘍、外傷術後の発症広範な骨欠損による咀嚼障害を伴う患者に対して、頬骨を固定源としたインプラントを応用した治療が多々報告され患者のQOLの改善を含め良好な結果を得てきている。しかし患側の骨量が限られ、インプラントどころか義歯も装着困難な場合がある。また、頬骨インプラントは上顎洞を貫通させ口蓋骨と頬骨にて固定させることが基本であるが、近年インプラント体の破折や上部構造のトラブルも報告されていることも事実である。今回我々は顎欠損患者に対して健常側の頬骨を用いインプラントを埋入、サイナスリフトを併用した2症例を経験し、長期安定の為に有用性が示唆されたので報告する。
Ⅱ 概要:
症例1 68歳 男性。左側上顎歯肉癌で、左側上顎半側切除術を施行した。顎補綴装着するも適合悪く、術後8年間は食事摂取が困難な時期が続いた。右健常側に頬骨インプラントを埋入すると同時にsinus floor augmentationを行い、補綴処置を行った。 症例2 78歳 女性。右側上顎歯肉癌で、 右側上顎半側切除術、右眼球摘出術を施行した。顔面欠損域にはエピテーゼを利用し形態を整えたが、義歯の安定が得られず摂食困難であった。左健常側に頬骨インプラント埋入およびsinus floor augmentationを行った。術後治癒を待ち、補綴処置を行った。
Ⅲ 結果:
症例1平成15年9月9日全身麻酔下に、Nobel Biocare社製Zygoma Implant 47.5mmを頬骨部への埋入、Brånemark Mk Ⅲ 4 x 11.5 mmおよび、Mk Ⅳ 4 x 11.5 mm x 2本を既存骨に、またを腸骨によるsinus floor augmentationと同時にMk Ⅳ 4 x 11.5 mm埋入、術者可撤性固定補綴処置を行った。補綴完成後1年でアバットメントの破損みられた。以後後5年10ヶ月経過良好である。症例2、Nobel Biocare社製Zygoma Implant 45mmを頬骨部への埋入と同時に腸骨によるsinus floor augmentationを行った。7ヶ月後にリエントリーして移植骨に対してインプラントを3本埋入した。その際に胸骨インプラントの口蓋骨に吸収がみられたが、移植骨が生着していたため動揺、炎症等みられず、アバットメントを連結し術者可撤性固定補綴を完成させた。同部位の経過は炎症等みられず、術後2年6ヶ月経過良好である。
Ⅳ 考察および結論:
頬骨インプラントを応用するにあたり、患側既存骨が困難な場合健常側胸骨をインプラントの固定源として応用し、なおかつサイナスリフトを併用することは、初期のトラブル回避、またインプラント治療の長期安定に有用であることが示唆された。
Ⅴ 参考文献:
Brånemark PI et al. Scand. J. Plast. Reconstr. Surg. Hand. Surg. 38; 70-85: 2004
Casp N et al. Int. J. Oral Maxillofac. Surg. 20; 92-98: 2005
van Steenberghe D et al. J. Clin. Periodontol. 18; 488-493: 1991