上顎骨腫瘍切除後に光造形モデルを用いたサージカルガイドにより頬骨インプラントを埋入して補綴処置を行った2例

○大場 誠悟1,重原 聡1,2,田島 暢崇1,南里 篤太郎1,竹島 博通3,今村 栄作4, 朝比奈 泉1

1長崎大学大学院 顎・口腔再生外科,2湘南デンタルケアーインプラントクリニック,3東海大学八王子病院口腔外科学,4横浜総合病院歯科口腔外科

Two Cases Report; Prosthetic Surgery with Zygoma Implant using Rapid Prototyping for Surgical Guide After Tumorectomy of Maxilla.

○Seigo Ohba1,Satoshi Shigehara1,2,Nobutaka Tajima1,Tokutarou Minamizato1,
Hiromichi Takeshima3,Eisaku Imamura4, Izumi Asahina1

1 Division of Regenerative Oral Surgery, Nagasaki University Graduated School,2 Shonan Dental Care Implant Clinic,3 Department Oral Surgery, Tokai University School of Medicine,4 Department of Oral Surgery, Yokohama General Hospital


【目的】
腫瘍切除後に骨欠損を伴う場合、顎義歯による補綴治療では十分な機能(咀嚼、発語、嚥下)や審美性の回復が困難になることが多い。このような場合は歯槽骨にインプラントを埋入し、骨支持型の補綴処置を行うことで対応が可能となる。しかしながら、骨欠損が広範にわたり既存骨が限られている場合には、頬骨インプラント埋入を適応することがあるが、解剖学的制約や、視野確保の問題などが存在する。また、骨欠損に伴い、理想的な位置へのインプラント埋入が困難となる。今回、光造形モデルを利用したサージカルガイドを用いて、頬骨インプラントの埋入を行った2例を経験し、良好な結果が得られたので報告する。

【症例】
1. 32歳 女性。左側上顎臼歯部の腫脹を主訴に受診した。全身麻酔下で腫瘍切除を行い、軟組織の治癒を待ち、再発の危険性が下がったころにインプラントを用いた補綴治療を予定した。術前にCT撮影し、それをもとに光造形モデルを作成した。これを応用してサージカルガイドを作成し、インプラントを埋入した。
2. 78歳 女性。右側上顎歯肉癌で、右側上顎半側切除を行った。治癒期間を待ち、顎義歯の作成を行ったが、安定が得られず摂食困難であった。CT撮影後、光造形モデルを作成した。サージガイドを用いて、左健常頬骨にインプラントを埋入した。

【結果】
サージカルガイドを装着し、予定通りの箇所へのインプラントの埋入が可能であった。術後は半年間の治癒期間をおき、通法通りに2次手術、provisionalの装着を行った。両例ともprovisional装着後約6ヶ月でfinalを装着し、経過良好である。

【考察および結論】
頬骨部へのインプラント埋入は、眼窩への突出などの危険性を伴う。また使用するインプラントは長く、埋入方向のブレなどの問題も伴う。本症例では、光造形モデルを作成することで三次元的に位置関係を把握することが可能となり、手術のイメージを支援するのに充分であった。またサージカルガイドを作成することで、所定の位置に安全且つ確実にインプラント埋入が可能であった。

【参考文献】
Brånemark PI, et al. Scand J Plast Reconstr Surg Hand Surg 38: 70-85; 2004.
Casap N, et al. Int J Oral Maxillofac Implants 20: 92-98; 2005.
van Steenberghe D et al. J Clin Periodontol 18: 488-493; 1991