デンタルインプラントの顎顔面領域への応用と恩恵

 近年の歯科におけるチタン性オッセオインテグレーテッド(骨結合型)インプラント治療は 1969年スウェーデンのブローネマルクらが初めて無歯顎患者に臨床応用して以来40年、患者の義歯の不自由さからの解放、予知性の高い治療法として現在では数百万人とも言われる人々に恩恵を与えてきました。この恩恵は患者だけでなく、世界中の歯科医師、医師、衛生士、技工士、大学の研究者 学生 企業 開発者らに研究、開発、教育、臨床の機会が与えられ、多くの産業が生まれ、魅了され注目を浴びています。
 また、今日では整復固定用プレートに代表される他科領域への応用・術式の確立やマテリアルの開発から適応症の拡大、顎顔面再建領域へと展開し臨床応用されてきています。
 顎顔面再建へのインプラントの臨床応用は1970代後半よりブローネマルクらによって行われてきました。顎顔面の腫瘍摘出後、交通外傷術後の顔面、口腔器官実質欠損の患者は、そのままでは外出することや摂食困難となる場合があり、その再建の為の拡大手術や度重なる手術は患者にさらなる肉体的精神的負担をかけることになります。
 インプラントを応用したエピテーセ、プロテーゼは維持、支持にも優れ、着脱が容易であるため、患者の喜びも大きく、有用性があります。しかし保険での対応はされていません。入院のため収入が絶たれた中で治療・入院費用を支払った後、退院後は社会に復帰することが困難な状態となり、高額なエピテーゼ等の治療を続けることは不可能です。そのため多くの患者が病院と自宅の行き帰りのみとなっているのが現状です。
 私は一人でも多くの患者様のQOL回復の為に、インプラントを応用した再建を1999年より試みてきました。それぞれの症例がエビデンスレベルでは対応できない場合が多く、困難を極めます。今回少ない臨床ですがお話しさせて頂きます。
 インプラント診療科、補綴科、そして大学関係者、学生の皆様、お誘い合わせの上、是非ご出席頂けましたら幸いです。